銀行明細・クレカ明細の提出方法

本記事では、帳簿を作成するために必要な資料のうち、銀行明細・クレカ明細(クレジットカード明細)をご提出いただく方法をご案内いたします。

当事務所で記帳を行う場合を前提としておりますが、ご自身で記帳されている方も参考になる内容ですので、ぜひご覧ください。

目次

銀行明細・クレカ明細

特徴

現代社会では、銀行・クレジットカードを通して決済が行われるのが一般的です。

そのため、帳簿の作成も銀行明細・クレカ明細を元に開始するのが通常であり、その意味でも最も重要な資料と言えます

どの会計ソフトも、銀行・クレジットカードとデータ連携を行って帳簿を作成する機能が標準になっています。

しかしながら、銀行明細・クレカ明細には次のような欠点があります。

銀行明細・クレカ明細の欠点
  • 取引内容が限られた文字数でしか表示されない。
  • 取引先名しか表示されないことも多い。

すなわち、取引をしたご本人以外には、明細を見ても取引内容が分からないというデメリットがあります。

個人事業主の場合はプライベートの支払いも多く混ざっているため、さらに判別が困難になります。。

したがって、ご本人に取引内容の補足説明をしていただく必要があります

本記事では、具体的にどの明細どのように補足説明するかについてご説明します。

事業用とプライベート用の違い

銀行口座クレジットカードも、1人で複数もっていることが一般的です。

私は銀行口座を7つ、クレジットカードを10枚持っています。。

そのため、どの明細が申告に必要か迷われることも多いと思いますが、基本的に事業用の入出金が1件でもある銀行明細・クレカ明細は必要と考えれば大丈夫です

そのうえで、次のルールを覚えておいてください。

種類区分ルール
銀行
口座
事業用口座全ての入出金に説明が必要
(1年間の入出金を全て帳簿に記載するため)
プライベート
口座
事業に関係のある入出金
説明が必要
(事業に関係のある入出金だけ帳簿に記載するため)
クレカ事業用
クレカ
全ての出金に説明が必要
(1年間の出金を全て帳簿に記載するため)
プライベート
クレカ
事業に関係のある出金
説明が必要
(事業に関係のある出金だけ帳簿に記載するため)

つまり、銀行明細・クレカ明細ともに、事業用なら全ての入出金に対して説明が必要で、プライベート用なら事業に関係のある入出金に対してだけ説明が必要である、ということになります。

ここで、事業用とプライベート用の違いは何か疑問に思われるはずです。

まず、法人の場合、法人名義で作成した銀行口座やクレジットカードは全て事業用になります

法人は事業を行うために存在するので、” 法人名義=事業用 ”なのは分かりやすいと思います。そのため、そもそも法人にはプライベート用の銀行口座やクレカ自体が存在しません

これに対して、個人事業主の場合、自分で事業用と決めた銀行口座やクレジットカード事業用になります

個人名義なので自分で決めるしかないという理屈になります。ただし、名義に屋号(例:APLOS)を付けて発行した銀行口座は当然に事業用口座となります。

あまり知られていませんが、個人事業主に限っては事業用の銀行口座を決めない(=全てプライベート口座を使う)という選択もできます。ただし、次に述べますが税務上は最低1つは事業用口座を決めた方が望ましいです。

それでは、個人事業主の場合、具体的にどの銀行口座・クレカを事業用にすればよいのかご説明します。

(個人事業主) 事業用の銀行口座・クレカの決め方

銀行口座

個人事業主が、お持ちの銀行口座のうちどの口座を事業用口座に選ぶかですが、私のおすすめは次の方法です。

事業用口座の選び方
  • 売上の入金される口座事業用口座にする
  • 売上の入金全て事業用口座に集める

最大の理由は、税務調査では売上の漏れを徹底的に調べてきますので、売上が事業用口座のみに入金されていれば疑いの余地がないからです

プライベート口座に売上が入金されていて、帳簿への記載が漏れていたら、意図的に行ったと疑われ重加算税を課される可能性が高まります。

その他にも、管理がしやすくなる帳簿が付けやすくなる、といったメリットがあります。

もし事業を開始したばかりの方であれば、新しい銀行口座を作って事業用口座にするのもおすすめです

真っ白な通帳から開始して事業用の売上を全てその口座に集めれば、あらゆる面から効率的です。

なお、売上だけでなく経費の支払いも事業用口座で行うのが理想ですが、これは税務調査対策ではなく、帳簿が付けやすくなることが主な理由です

売上と違って、支払いがどの口座で行われていても税務調査で問題となることはまずないです。

クレジットカード

次に個人事業主のクレジットカードですが、銀行口座と同様にどれを事業用にするかご本人が自由に選択できます

どのクレジットカードを事業用に選ぶかですが、私のおすすめは次の方法です。

事業用クレカの選び方
  • 事業用の支払いが最も多いクレカを事業用にする
  • 事業用の支払いはなるべく事業用クレカで行う

理由は、1つの明細に全ての事業用取引が載るため、経費の計上漏れをする可能性が低くなり、かつ、次に述べるクレカ明細への説明作業が楽になるからです。

ただ、「この支払いは別のカードの方がポイント還元率が良い」という場合は、プライベート用クレカを使っても問題ありません。

私の場合、事業用の支払いはひとつのクレジットカードに集約していますが、たまにポイント還元率の関係で別のカードを使うこともあります。

なお、プライベート用の銀行口座やクレカで事業用支払いをした場合、領収書をもとに帳簿に計上するならば明細はなくても構いません

プレイベート用の銀行明細・クレカ明細は、事業に関係のある取引だけ帳簿に計上すればよいので、領収書があれば帳簿に計上できるからです。

もしプライベート用の銀行明細・クレカ明細に事業用取引が数件しかないのであれば、明細ではなく領収書等をご提出いただく方が簡単です。

ちなみに、これとは逆に、事業用クレカでプライベートの支払いをしても問題ありません

事業用の取引がひとつのクレジットカードに集約されていること」が大切ですので、「事業用カードにプライベートの支払いが混ざっていることは重要ではない」と考えればOKです。

あくまで個人事業主の場合です。法人クレカは事業のために存在しますので、プライベートの支払いは無いことが前提となります。

まとめ
  • 事業用の銀行明細・クレカ明細は、全て必要である
  • プライベート用の銀行明細・クレカ明細は、事業用取引の部分だけ必要である。ただし、その取引の領収書があれば明細はなくても問題ない。

記載方法3パターン

ここからは、銀行明細・クレカ明細にどのように補足説明をするかについて解説します。

記載方法は3パターンありますので、ご自身に適した方法をご選択ください

(方法1) 明細を印刷して手書きする方法

1つ目の方法は、Web明細を印刷して手書きで取引内容を記載する方法です

紙通帳の場合はコピーして記載すればOKです。

古くからある方法で、若い方から高齢者まで分かりやすいのが最大のメリットです

私の母は紙通帳に鉛筆で直接メモ書きしています。。

手書きで記載する方法のメリット・デメリットをまとめると、次の通りです。

メリット
デメリット
  • 年齢問わず分かりやすい
  • パソコン不要
  • 印刷又はコピーが必要
  • 記入スペースが小さい
  • 手書きで時間がかかる
  • 記帳代行料が上がる

紙明細の日付・金額・内容を当事務所で会計ソフトに手入力していくため、記帳代行料は上がってしまいます。

なお、「手書きなので時間がかかる」というデメリットに関しては、工夫をすれば効率化できます。

具体的には、次のような記号を併用して簡略化して記載するのがポイントです。

記号

記号意味
プライベートの入出金
(無関係なので✕)
領収書から経費に計上したい取引
(Rは領収書・レシートの略)
既に記載したものと同じ取引

記号を併用して明細に手書きした場合の記載例は、以下の通りです。

明細への手書き例

入金出金明細印字手書き例
1万ビックカメラプリンタインク購入
20万ササキコジロウ売上
5万ミズホヘンサイ事業用借入 返済
3万バーバリー(※)
4万ミヤモトムサシ✕ 飲み代の立替分(※)
6万Amazon(※)
5万ミズホヘンサイ(※)
4万トウキョウデンリョク自宅兼事務所の電気代(70%)(※)
80万アプロスソンポ台風で壊れた事務所の保険金(※)
  • プライベートの出金は内容を書かなくても大丈夫です。経費に計上しないので税務署も興味をもちません。
  • プライベートの入金は内容をしっかり書きます。書かないと税務署は「これは売上じゃないですか?」と疑ってきます。
  • 例えばAmazonで年間100件の事業用品を購入した場合、明細には100件全てに「Amazon」とだけ表示されるため、内容を領収書からひとつひとつ調べるのは大変です。その場合は「R(領収書・レシートの略)」と書いてもらえれば、明細からは計上せず領収書から計上します。
  • 既に記載した取引と同じ取引が出てきたら、「」と書いても大丈夫です。
    毎月同じ支払いがある場合などに使いますが、同じ取引先でも取引内容が毎回違う場合は使えません。
  • 事業用とプライベート用が混在している取引は事業割合を記載します。上の例では4万円の70%が事業用と分かりますので、4万円×70%=2万8千円が経費となります。
  • 事業用かプライベート用か判断がつかない取引は、内容さえ書いていただければ当事務所で判断いたします。

なお、プライベート用の銀行明細・クレカ明細は大半の取引が「✕」になりますので、全て「✕」と書くのが面倒な場合は、事業に関係のある取引だけ「〇」をしても大丈夫です。

プライベート用の銀行明細・クレカ明細に事業用取引が数件しかないようであれば、明細ではなく領収書等を提出いただく方が簡単です。

個人事業主銀行明細・クレカ明細の手書き記載例をご用意しましたので、ご参考ください。

\ 個人事業主 /

\ 個人事業主 /

記載例は定期的に更新しております。

法人の場合はプライベート支払いが発生しないためシンプルなので省略しますが、記載方法は同様です。

(方法2) Excelに記載する方法

2つ目の方法は、Web明細をCSV出力してExcelで取引内容を記載する方法です

Excelに慣れている方におすすめの方法です。

銀行明細・クレカ明細ともに、通常はWeb明細をCSV出力できますので、出力したファイルに取引の説明を記載すればOKです

どの金融機関も1ヶ月単位でしか出力できないのがネックです。1年分だと12ファイルになってしまうので、予め1ファイルに集約してから作業を行うと効率的です。

Web明細を1ヶ月単位でダウンロードする手間を省くため、会計ソフト等を1ヶ月間だけ契約して、自動連携した年間データをExcel出力するのもおすすめです。次にご紹介する “方法3” をご参照ください。

Excelに記載する方法のメリット・デメリットをまとめると、次のようになります。

メリット
デメリット
  • 手書き不要
  • 素早く入力できる
  • スペースを気にしない
  • Excelに慣れていないと紙より時間がかかる可能性がある

頂戴したExcelデータを当事務所の会計ソフトにインポートしますので、手入力がないため記帳代行料は割安になります。

なお、Excelで記載する場合は、手書きのような記号は使わず、説明も簡略化・省略化せずに、ひとつずつ丁寧にご記載ください

Excelのメリットはスピーディかつ大量に入力できることですので、簡略化・省略化する意味がないためです。また、詳細に記載する方が帳簿が正確に出来上がります。同じ内容の取引はコピペできるので効率的です。

個人事業主銀行明細・クレカ明細のExcel記載例をご用意しましたので、ご参考ください。

\ 個人事業主 /

\ 個人事業主 /

記載例は定期的に更新しております。

法人の場合はプライベート支払いが発生しないためシンプルなので省略しますが、記載方法は同様です。

(方法3) 会計ソフトを使う方法

3つめの方法は、会計ソフトを利用する方法です

PC操作に抵抗がなければ、1番おすすめの方法です。いずれは自分で帳簿を付けたい場合もスムーズに移行できます。

会計ソフトを使えば、金融機関と連携設定を行うだけで1年分の取引が帳簿形式で表示され、内容を直接入力することが可能になります。

1度入力した取引が学習されるなど、会計ソフトには様々な機能も付いていて便利です。

どの会計ソフトが良いかですが、3大会計ソフトである弥生・MoneyFoward・freeeから選んでおけば、失敗することはないはずです。

唯一のデメリットは、会計ソフト利用料がかかってしまうことです。

この点、弥生年額プランしかありませんが、MoneyFoward・freee月額プランがあるため、確定申告前の数ヶ月間だけ月額プランを契約して利用料を最小限に抑える方法もあります。

年額プランでは弥生が1番安いので、焦らず取り組みたい方は弥生をおすすめします。弥生はコスト・操作性・サポート・マニュアル全てにおいてバランスがよい会計ソフトです。

会計ソフトを利用する場合は、シンプルに次の5つの勘定科目を使うだけで大丈夫です。

勘定科目区分
売上収益本業の収入
経費費用事業用の出費
プライベート入金資産飲み代の立替など
プライベート出金資産遊び代など
その他入出金資産上記以外の取引

売上以外は標準設定されていない勘定科目なので新たに作成します。

勘定科目には補助科目を設定することが可能です
例えば「売上」という勘定科目に「A社」「B社」「C社」などの補助科目を付ければ、得意先ごとの売上も集計できるのが会計ソフトのメリットです。

この5つの勘定科目だけご使用いただければ、具体的な勘定科目は当事務所で選択いたします。

一般の方は勘定科目を選択するのに1番時間がかかりますので、そこを簡略化することで作業時間を短縮するのが目的です。

ただ、ご自身で区分して集計したい経費があれば、ぜひ使用してみてください。

経費には様々な勘定科目が標準設定されています(例:旅費交通費・広告宣伝費…)。ご自身で支出管理をしたい経費だけに絞って使っても問題ありません。帳簿作成は税理士に任せたとしても、経費をご自身で管理するのはとても有益です。

勘定科目の設定が終わったら、次に金融機関と口座連携を行います。

連携すると、登録した銀行口座・クレカデータが帳簿形式で1年分表示されますので、取引ひとつひとつに対して勘定科目を選びながら取引内容を記載していってください

具体的には、「摘要欄」銀行明細・クレカ明細の連携データがそのまま表示されていますので、以下のように後ろに1文字分スペースを空けて内容を記載すればOKです

摘要欄摘要欄(追記後)
トウキョウデンリョクトウキョウデンリョク 事務所の電気代

後ろに記載するのがポイントです。上書きしてしまうと、後から修正したいとき内容が分からなくなるので注意しましょう。

自宅兼店舗の電気代で70%だけ経費という場合は、「店舗の電気代(70%)」のように記載していただければ大丈夫です。

銀行明細・クレカ明細の保存義務

最後に、銀行明細・クレカ明細の保存義務について触れておきます。

銀行明細・クレカ明細は、領収書や請求書などと同様に保存する義務があります。

従来までは印刷して保存しておくのが一般的でしたが、2024年1月電帳法(電子帳簿保存法)が完全義務化されたことで、電子取引に関する資料としてダウンロード保存することが強制化されました

つまり、上記3パターンの記載方法いずれを選んだとしても、最終的にはWebからPDFをダウンロードして保存しておかなければなりません

電帳法の詳細は別の記事でご説明しますので、ひとまず「銀行明細・クレカ明細はPDF保存しなければならない」とだけ覚えておきましょう。

まとめ

今回は、銀行明細・クレカ明細をご提出いただく3つの方法をご紹介いたしました。

次の記事では、紙資料の提出方法についてご紹介します。


資料提出マニュアル

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